存在は知っているし、ちょっと興味はあるものの、なかなか買って読むところまでたどり着かない雑誌もありますね。
『婦人画報』はそんな雑誌のひとつでした。
理由はいくつかあります。
まず、そもそもターゲットとする「年齢層」に達していなかったこと。
お試しで買ってみるにはいいお値段……そう感じるということは、つまり購読者として未熟というか、雑誌とマッチングしていないのかなぁ、と。
自分の興味のある分野の専門誌なら、少しぐらい高くても、その割に薄くても買っちゃいますからねぇ。私の場合、『CRUISE』なんかがそうです。
でも、年末に出る『婦人画報』と『家庭画報』の新年特別号を見かけるたびに、「今年は買ってみようかなぁ」と思い続けて、かなり経ちます。
今回、楽天マガジンに登録したのを機に、遂に『婦人画報』デビューです。
『婦人画報』2018.8月号 目次
予想以上にみっしり。読みごたえがありそうです。嬉しい。
特集●いままでも そしてこれからも 100年の日用品
100年雑誌『婦人画報』が選ぶ【現代版日用品カタログ】という副題付き。
『婦人画報』自体が100年の歴史を持っていることを、さりげなく誇る感じが素敵。
とはいえ、本当に雑誌を100年発行し続けるのは相当難しいんでしょうねぇ。
いま、あなたの家にそれはありますか?
こんな問いかけで始まった、特集の1項目目。
どんな日用品が紹介されているのかというと、
- 卓袱台
- 乱れ箱
- おひつ
といった、かつては代々受け継がれてきた家庭の必需品です。
でも恥ずかしながら、乱れ箱の存在は知りませんでした。
ハンカチや扇子など、外出時に携帯するものを事前に準備しておくための浅い箱なんですね。旅館で、浴衣を入れてある箱といった方が馴染みがいいでしょうか。
用語を調べてみると、「たたんだ衣類や手回り品などを一時入れておく、漆塗りで蓋がない浅い箱」とありました。丸い形状の乱れ箱も存在するようです。
誌面に登場したのは、制作年代が幕末で、蒔絵の施された美しい乱れ箱でした。
優に百年を経ているというのに、写真からも美しい艶と鮮やかな絵柄が見て取れます。これは美しい。
漆塗りの箱は、30年から40年に一度、漆職人にお手入れをしてもらうことで、その美しさを留めておくことができるのだとか。そして日常的にこういった本物の美に触れることで得られる豊かさは、何物にも代えがたいものですね。
私には分不相応な品物ですが、手持ちの箱を利用して携帯必需品をまとめておく工夫はしてみようかと思いました。
もし時間があれば、適当な大きさの箱にお気に入りの紙か布を張って、オリジナルの乱れ箱を作ってみるのもいいかもしれません。
次に、日本を面白くするモノとは?
「fennica」(ブランド「BEAMS」の一部門で、〝デザインとクラフトの橋渡し〟をコンセプトとした家具や民芸品を扱う)のディレクターの二人と、日本の工芸品を扱う「中川政七商店」の会長の対談形式。
紹介されているのは
-
フェニカロッカー(バーナード・リーチが日本の家具職人に発注したロッキングチェアの復刻版)
-
花ふきん(二枚仕立ての蚊帳生地で作られた大判のふきん)
-
濱田窯の六角皿(機能と見た目を重視した益子焼)
などなど。
対談ページの途中に、品物紹介の写真が挟み込まれる構成のため、読むスピードと興がそがれたのが残念。
対談中の言葉にはいくつも共感するところがありました。
「ミニマリズム」と称される、持たない生活も流行っていますが、厳選されたお気に入りを持てばいいですよね(笑)
―中川氏
これは、ベストセラーになった近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』のメソッドにも通じるものがありますね。
自分の持ち物は、厳選したお気に入りのものだけにしましょう。高級なものも、日常でどんどん使いましょうという。
それは本当に真理だと思います。
でも、実際のところ、謎の勿体ない精神を発揮してしまうんですよねぇ…
この項では、「今、手に入る逸品」の紹介でしたが、この次の項目がなかなか切ないものでした。
100年後、「ない」かもしれない。日本の日用品は、絶滅の危機に瀕しています
紹介されているのは大桶と裁ち鋏。どちらも最後の職人さんだそうです。
そういえば、裁ち鋏ということばもずいぶん久しぶりに聞きました。母は洋裁をしましたが、私はそういうこととも無縁ですし。
案外そういうご家庭も多いんじゃないでしょうか。
需要がなくなれば、供給も緩やかに途絶えていくわけで、それが時代の流れといってしまえば確かにそうなんでしょうが、このまま消失するのに任せていいものかどうかと、焦りにも似た気持ちになります。
「絶滅の危機」という表現が用いられていますが、これが生き物だったらしかるべき団体が保護に乗り出すのにねぇ。
かと言って、私個人の力でできることはないに等しいのがまたやるせないものです。
と、しんみり考えさせられたところで、次はもっと身近な日用品として、大阪発の〝ほんまの日用品〟のあれこれが紹介されています。
象印とタイガーの魔法瓶、カッターナイフ、輪ゴムにボンド。フエキのりに牛乳石鹸、金鳥の蚊取り線香など、昔から当たり前のように目にし、使ってきたものばかりです。
大阪の町工場の実力は有名ですが、それを再確認しました。
日本には、風土を表す「よきモノ」がまだあります
シェフの須賀洋介さんが、海外から帰国して日本を旅することの大切さを知ったという経緯から出会った多くの工芸品のうち、後世に伝えたいと思うものを選定しています。
- 鉄瓶(山形)
- 曲げわっぱ(秋田)
- 越前刃物(福井)
- 有田焼(佐賀県)
- 石州瓦(島根)
個人的に、この中で一番気になるのは鉄瓶です。
鉄瓶でお湯を沸かしてお茶を淹れると、茶葉の渋みと甘さがバランスよく抽出されるそう。
それに、慢性の貧血体質である私にとっては、微量とは言え鉄分の補給ができるのではという期待が大きいのです。
手軽さで考えると、電気ポットなんですけどねぇ。
さらにその後、現代版日用品カタログとしてうちわやガラス風鈴など。次世代の名作となるであろう品として、花器や細長いカードのような形状のろうそくなど、多種多様なもの。
キッチンやカフェタイムを美しく彩るおにぎり焼き器や茶缶(表紙に選ばれています)、オーダーメイド焼き印やどこかポップなテイストの神棚などのニッチな日用品も、楽しく見せてもらいました。
力のこもった特集で、満足です。
ファッション●色石の〝魔法〟
夏という季節柄もあってか、色とりどりの石で作られたアクセサリーが本当に美しくうっとりと眺めました。
カラーストーン図鑑として、アメジストやガーネットなど代表的な石の解説なども掲載されています。
『婦人画報』全体を通して感じたことですが、写真そのものの美しさや構図の端正さはピカイチだと思います。
キャプションにはアクセサリーのブランドやお値段も記載されていますが…ここは敢えて読まないのが正解かもしれません。想像したよりも一桁違うものがざらにありました。
『婦人画報』2018.8月号の感想とまとめ
非常に読みごたえがありました。ですが、毎月読むのは少し疲れてしまうかもしれません。私にはまだふさわしくないというか。クラスが合わないというか。
総中流時代などと言われて久しいですが、案外そういった壁って感じるものですね。上から下に行くのは簡単ですが、下から上に馴染んでいくには少し時間が掛かると思います。
もうひとつ、気になった特集が「夏の養生スープ」。
冷えがちな体のケアにもなりそうですし、あとでもう少し詳しく読んでおきます。スープ自体が大好物ですし、嬉しい特集でした。
読めなくてがっかりと感じたことはなく、むしろ今までの電子版にはあまりなかった広告ページがしっかりと掲載されていたのが印象的でした。
この広告がまた、ハイブランドの美しいものばかり。ちょっと目の毒かもしれません。
次号予告によると、「日本酒特集」。
ほかには「里山ごはんの宿」、「秋のおしゃれ、新貴族主義」とのことです。
まだ夏も始まったばかりですでに秋…
少し気が遠くなりかけました。
季節の先取りがおしゃれさんなのはわかるのですが、私は体力的に夏を乗り越えること自体がしんどいですからねぇ。8月1日発売の雑誌で「秋」を感じたいかどうかというと、残念ながらノーですわ。
2018.6.30配信開始//2018.9.29配信停止
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