『東京グラフィティ』。この雑誌は楽天マガジンで初めて知りました。店頭では見かけた覚えがありません。
調べてみたところ、出版しているのは株式会社グラフィティ。『東京グラフィティ』誌の出版のほか、大学・専門学校のキャンパス誌、ウェブコンテンツの制作を行っているようです。タレントの発掘からマネージメントも手掛けているとか。
巣鴨から原宿まで、毎号1,000人以上の人々が登場!
リアルな東京の今の声をお届けします。
どうやらエリア情報誌に近いライフ情報誌なのかな、と推測しました。
ここまで調べて色々納得がいったのですが、実は何の予備知識もなく読んだこの雑誌、「……コレ、一体なんなの……?」と困惑してしまったほど奇妙なものだったのです。
読んでみようかな、と思ったきっかけは、特集の「部屋と持ちモノ大図鑑」。
表紙に「部屋と古着」「部屋とキャンプ」「部屋とダージリンティー」「部屋と等身大ドール」などの吹き出しがたくさん並んでいるのが目に入ったからです。
もともと、誰かのコレクションや蔵書、本棚の紹介を見るのが大好きですし、インテリアにも興味があるからというのが大きいでしょうね。
面白そう。ワンテーママガジンなのかな、シンプルでいいな。
そんな風に感じました。
そこで読もうと思ったのですが…
『東京グラフィティ』10月号目次
かつてないシンプルさ。ワンテーママガジンにしてもほどがある。
いまにして思えば、まずこれが『東京グラフィティ』の洗礼でした。
すっかすかですよ。
特集●部屋と持ちモノ大図鑑
モデルやタレントには疎いので、お部屋と愛用グッズ紹介のトップバッター柴田紗希さんのことは知りませんでしたが、26歳という年齢が掲載されている横に「何十年も伸ばしていた髪を切りました」と書いてあるのに失笑。そうですか。生まれてから最近まで髪を切ったことがなかった、ということですかね。
もうこの時点で、「真面目に読んだら負け」的な雰囲気を感じ取りまして、あとはにやにやとツッコミを入れながら眺めるモードに移行です。
そうしましたら、まぁこれが楽しいのなんのって。
「女子力が高い自信がある」と語るヘアサロンの男性オーナー(これは仕事柄、ということもあると思うのですが)のおしゃれなお気に入りアイテム、台湾が大好きな女の子のコレクションはどこかシュールでキッチュな現地のアイテム、とそれぞれにそれぞれのこだわりと愛着がうかがえるものばかり。
さらに読み進めると、ホストクラブオーナーや旦那さんに先立たれて一人住まいの女性などが出てきたので仰天しました。
何なの、この人選。
どうしてホストと独居老人の住まいとお気に入りのものが見開きに並ぶの?何たる暴挙。
いやー、私も今まで色々な本や雑誌を眺めてきましたが、ここまでベクトルの違うものを一度に目に入れたのは初めてでした。
その後には「お部屋にあるモノ大調査!」のコーナーです。
日本在住の外国人6人のお気に入りである
日本のカルチャー作品、置物、母国に持ち帰りたいものなどの紹介。
そして
坊主高校生のお部屋にあるモノとして
愛用のシャンプー、絶対に捨てられない宝物、身だしなみアイテム…
「坊主高校生」!
こ、これはいわゆる一種のパワーワードなのではなかろうか。
未だかつて、「部屋とインテリア」という次元における「坊主高校生」の立ち位置を考えたことなどありませんでした。
しかも「愛用しているシャンプー」って!?
と動揺する読者を裏切るかのように(一人を除いて)各自こだわりがあることにも、改めて「あぁ、そうだよねぇ。お年頃だもんねぇ」と思いました。はい。
こうなってくると、モデルだのヨガインストラクターだののページはもはやインパクトが足りません。
ヲタクのカオス部屋(原文ママ)は男性同人作家のもので、こちらはなかなか面白かったです。親近感を覚えるといいますか。
社交ダンスのドレスデザイナーのお気に入りアイテムも素敵だと思いました。自分の好きなことや趣味と仕事が混然一体となったところがいいですね。
と、思っていたら再びの「お部屋にあるモノ大調査!」コーナー。
今度の人選というか、ピックアップカテゴリーがまたすごかった。
ファッショニスタゲイとぽっちゃり女子。
ぽっちゃり女子はまだわかりますよ。ファッショニスタゲイって何者?普通のゲイとは違うの?
っていうか、普通のゲイってそもそも何?
と、自分の中の価値観…ではないな、えぇと、概念の枠組みが色々と揺さぶられました。いやー、パワーワードですね。ファッショニスタゲイ。今後、使うことはなさそうですけど。
ともかく、そのファッショニスタゲイのみなさん(6名)に聞いたのは
お気に入りの香水、勝負下着、もらって嬉しかったプレゼント、冷蔵庫にいつもあるものなど。
かなり踏み込んだ内容のようにも思いますが、これが何というか彼氏とのラブラブぶりがうかがい知れる回答が多くて非常に微笑ましいものでした。結構結構。仲良きことは美しきかな。
一方、ぽっちゃり女子への質問は
必ずストックしているお菓子、勝負下着、私だから似合うアクセサリー、冷蔵庫にいつもあるものなど、微妙にファッショニスタゲイのみなさんとは違っていました。
ひとつ気が付いたのは、アクセサリーの項目では、大ぶりのものやオーダー物が挙げられているのが共通していたことです。
私も小柄な方ではないし、華奢でもありませんので、今後アクセサリーを選ぶときには大き目のものを選ぶようにしてみようと思いました。
よかった、一つ参考にできることがあったぞ、と思いつつページをめくるとこれがまた…
「恋人のラブドールと暮らす高齢男性のノスタルジック部屋」
……ドールが悪いというわけではないけれども、えぇと別居中の妻子がいて休職中で、それなのに今狙っているアイテムが「花形にくりぬかれたダイヤモンドの指輪(10万円)」っていうのはどうなの……
それを「ドールが欲しがっている」っていうことにするのはどうなの…
と激しく困惑しました。なんというか、ダメンズというものを越えた何かを感じます。はぁぁ。
ここで精神力がかなり削られたものの、モルドバ出身のロリータ趣味の女性の写真と彼女のお気に入りで少し回復。美しいは正義。
私の趣味とはまったくかけ離れていますが、1930年代以前のアメリカンアンティークのコレクションを披露する男性のページでも、びしっと筋が通ったコレクター魂を感じてさらに少し回復、と持ち直してきたところでまたツッコミどころしかないページが現れました。
「オラオラSTYLE」なる、なんというか、あぁ、ぽっと出の経営者にはそういう趣味の人っているよね的な…水晶の数珠とか世界限定250個の腕時計とか有名人と同じサングラスとか、毛ガニの甲羅とか…
誰か止める人はいないのか。
その隣がまた素晴らしい。バーレスク東京のダンサー、私はタカラヅカ歌劇の対極に位置するようなエンターテインメントと理解しましたが、彼女のお気に入りアイテムに美容系のものが多いのはともかくとして、「憧れのAV女優の写真集」と「お客さんにお土産でもらったいくら」が並んでいるのに頭がくらくらしました。
何だ、この絵面。わけがわからない。
と、まぁここで完全にノックアウトされまして、三度目の「お部屋にあるモノ大調査!」、キラキラ女子小学生編とおじいちゃんおばあちゃんが30年以上愛用してるモノ編はあまり頭に入ってきませんでした。
「ずっと変わらない我が家の味」なんて、とてもすてきなんだけどなぁ…
『東京グラフィティ』20018.10月号感想とまとめ
いやー、びっくりしました。
破壊力高すぎだ、この特集。
でも冷静になって考えると、「部屋と持ちモノ」と言ってもお部屋自体についての言及はほとんどなくて、主に持ち物についての特集でしたね。
この人はこんなものを大事にしている、という感じで。
ただその持ち物には、人のライフスタイルというか人生というか、そういうものがものすごい密度でくっついているというイメージでした。
ふと思ったのが、作家というか小説や漫画を書く/描くひとなら、この特集から相当のインスピレーションを受けるんじゃないかなぁ。
面白いもん、ホントに。
私も色々な意味で余裕ができたら何か書きたいよ。
と、久しぶりに強烈なインパクトを受けました。
もうひとつの特集、ファンの数が一桁のアイドルである「ヒトケッターアイドル」というのも衝撃というかなんというか…
でも、頑張っているマイナーアイドルに対して、応援してくれる人がいるというのは素晴らしいことだと思うし、影響する範囲は(現時点では)狭くても、確実に世界には(広い意味での)愛情が満ちているんだなぁというようなことを感じました。
人にもラブ、モノにもラブですね。世界にはラブが必要、と。
はぁ、それにしてもまったくもってぶっ飛んだ雑誌でした。恐れ入りました。
もうひとつ恐れ入ったのが、この雑誌の楽天マガジン上のカテゴリが「男性ライフスタイル」に分類されているところです。
何かが違う。絶対に何か違ってる。
そう思わざるを得ません。
かと言って、どこに分類すべきなのかはまた悩むところです。うーん、しいて言えば「趣味・娯楽」かなぁ。そこでも浮きそうな気がしますけど。
電子版には次号予告すらありませんでしたが、ウェブサイトによると「ホストの生き様」特集だそうです。
またインパクトのありそうな…
ところで、ウェブサイトでは次号が「10月号」と表記されているのですが、今号が10月号なので正しくは「11月号」かと思われます。
2018.9.22配信開始//配信停止
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