『サライ』は以前実家にあったのを、よく読んでいました。愛読していた、と言ってもいいと思います。実年齢よりも上の世代の雑誌が好きだったんですねぇ。
『サライ』の特集は旅にグルメ、カルチャーといった分野が主なものですが、「建築家の宿に泊まる」(2018.7月号)、「日本酒 いま呑むべき30本」(2018.1月号)、「鮨は地元前がうまい」(2018.3月号)など、なんというか“一歩踏み込んだ”感のあるものが多く、新鮮な切り口で好きです。
長らくご無沙汰でしたが、久しぶりに電子版で再会しました。
2018.9月号はまさかの「漫画」特集。
昨年の11月号では同じ(?)カルチャーカテゴリでも「北斎を見よ」なんていう特集でしたから、幅の広さが凄いですね。
とは言え、今やマンガとアニメは立派な日本カルチャーの一角のようですし、『サライ』の出版社である小学館もたくさんのマンガを世に送り出していますから、不思議なことではないのかもしれません。
50代以上の男性(が主なターゲットだと思われます)におすすめされるべき「名作漫画」とははたしてどんな作品なのでしょうか。
『サライ』2018.9月号目次
電子版でもたくさん読めますね。と、いうよりもこれ、ほとんど全部なのでは…嬉しい限りです。
あ、別冊付録の『カムイ外伝』は未掲載でした。
大特集◆この国は「漫画」でできている 世界を夢中にさせるニッポンの文化
小学館の『ビッグコミック』創刊50年という記念の特集でもあるようです。
かつては子供向けと思われていた漫画を、大人が読める上質なエンターテインメントへ変えたおよそ半世紀の歩みを辿り、数々の名作を繙(ひもと)く
というコンセプトのもと、
養老孟司による巻頭言、「漫画を読んで感性を取り戻せ」
第一部 「大人向け漫画」の戦後史をひもとく
第二部 「読むべき名作案内」
そして別冊付録の『カムイ外伝-再会-』などで構成されています。
余談ですが、『カムイ外伝』は単行本未収録作品だそうで、ファンには貴重な再録だと言えるかもしれません。
ざっと読んでみたところ、貸本、劇画ブーム、青年向け雑誌の創刊からメディアミックスへとつながる戦後の漫画史についてわかりやすく解説されており面白かったです。
残念なのは、子供~少年漫画と少女漫画についての言及はなかったこと。それから、さすがに小学館から出版社された作品をメインに取り上げられているので、選定された作品に偏りがありそうに思われました。
それでも、『ゴルゴ13』や『釣りバカ日誌』など、私でも知っている作品がごろごろと載っているのは凄い。
「紙で映画をこしらえたい」「大人の鑑賞に堪えるリアリティをもったドラマを描きたい」
と語るさいとう・たかをのインタビューも、感心しつつ読みました。
動くもの、映画を目標にしていたとは思いませんでしたが、確かに印象に残る漫画には、多かれ少なかれ動きというか、作中の息吹のようなものを感じますね。
本誌では触れられていませんでしたが、たとえば『ドラえもん』でのび太がびっくりして飛び上がる絵のコマ。思い起こすと、本当に飛び上がったように感じていたような気がします。
漫画の表現は、美術的にもかなり優れているのかな。
「読むべき名作案内」
ここでは
- 『ゴルゴ13』 さいとう・たかを
- 『三丁目の夕日』 西岸良平
- 『釣りバカ日誌』 やまさき十三/北見けんいち
- 『陽だまりの樹』 手塚治虫
- 『遥かな街へ』 谷口ジロー
- 『総員玉砕せよ』 水木しげる
- 『美味しんぼ』 雁屋哲/花咲アキラ
上記7作品が重点的に解説され、それぞれの作品に似たカテゴリーの作品も紹介されています。その他にも「いまこそ、読むべき作品10」として挙げられた作品が以下のとおり。
- 『黒イせぇるすまん』 藤子不二雄A
- 『寺島町奇譚』 滝田ゆう
- 『アドルフに告ぐ』 手塚治虫
- 『未来の想い出』 藤子・F・不二雄
- 『宗像教授伝奇考』 星野之宣
- 『夕凪の街 桜の国』 こうの史代
- 『PLUTO』 浦沢直樹・手塚治虫・長崎尚志
- 『深夜食堂』 安倍夜郎
- 『鼻紙写楽』 一ノ関圭
- 『諸星大二郎劇場』 諸星大二郎
こうの史代は女性漫画家ですし、女性誌の連載かと思っていたら、青年向けの『Weekly漫画アクション』(双葉社)掲載作でした。知りませんでした。『この世界の片隅に』も同誌に掲載されたのですね。
巻頭言の養老孟司の記事では高橋留美子のセリフ回しなどが解説されていましたが、それも少年/青年漫画としてのカテゴリですから、本号の特集で紹介された作品はすべて青年漫画と言えそうです。
ところで、このラインナップをつらつら眺めて思ったのですが、スポーツ漫画があまり選ばれていないのが意外でした。ホラーものとギャンブル漫画も。出版社の縛りでしょうか…なんてうがった見方をしてしまいますが。
さて、紹介された作品の中で私が読んだことのあるのは、藤子・F・不二雄の『未来の想い出』。
これはおすすめされるのが納得の名作だと思います。できれば『銀河鉄道999』も入れていただきたかった…!(松本零士作品は『戦場漫画クロニクル』がピックアップされています。)
とはいえ、今後もし読む機会があったら、おすすめ作品は読みたいと思います。できればコメディものの短編だと嬉しいのですが…『黒イせぇるすまん』かなぁ。
『サライ』2018.9月号感想とまとめ
日頃はあまり青年漫画に触れる機会はないので、評価の高い作品について知ることができたのは良かったと思います。
漫画もたくさんありますから、ある程度目星をつけてから読まないと時間ばっかりかかっちゃいますしね。
さて、本号のもうひとつの特集が「漢方と薬膳」でした。
「漢方薬の煎じ方」に関して正しい知識が得られましたし、時期的に夏バテ解消につながる「薬膳料理」を紹介してくれているのも勉強になりました。
薬膳料理というと、あまりボリュームがないのかな、とか美味しくないのかななどと感じていましたし、時間がかかりそう、材料が手に入らなさそうというマイナスの先入観もありました。
それでも、赤ワインで干し無花果を煮てヨーグルトと合わせる「無花果ヨーグルト」(肺を潤し、消化促進効果や免疫力向上を促す)や、茗荷と生姜、胡瓜、山芋、オクラをそれぞれみじん切りにして醤油やポン酢などお好みの調味料で味を調える「万能さっぱり薬味」(体を温める素材と冷やす素材との組み合わせでむくみの解消や疲労回復に役立つ)など、簡単にできそうなレシピもあって、試してみたい気分になりました。
読み応え十分な一冊でした。
久しぶりに読んだ懐かしの連載、「定番・朝めし自慢」もよかったです。朝から信念を持って選んだメニューを食べられる生活はいいなぁ。
江上料理学院院長の江上栄子さんの「朝めし」。麗しい。
私の朝めしと言えば、フルーツグラノーラに無脂肪ヨーグルト。もう少しちゃんとポリシーを持って食べたいのですが…
さて、次号予告によると、特集は「日本美術と紅葉の京都」。
年々紅葉の見ごろは遅くなっていると思うので、まだ早いのではないでしょうか…
そして創刊29周年特別付録の第1弾として「若冲レッド」の太軸万年筆付きだそうです。
鮮やかな赤、キャップに若冲の描いた南天の図柄(『南天雄鶏図』)が控えめに入っています。うーん、ちょっと欲しいです。赤が好き。
それにしても、「天才絵師・若冲×サライ初のコラボレーション」というキャッチコピーに少し笑ってしまいました。何かが違う。
2018.8.9配信開始//2019.8.8配信停止
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