『ナショナルジオグラフィック 日本版』睡眠不足なのはわかっているけれど【2018.8月号】

『ナショナルジオグラフィック』2018.8月号

『NEWTON』は読んだことがありますが、『ナショジオ』は…病院の待合室なんかで手に取った記憶があったようななかったような。
つまり、あまりココロ惹かれる要素を感じたことがなかったわけですね。

その理由というのは、まぁ単純に地理、ないし動物学的な分野には興味が薄いからでして、そういう意味では『NEWTON』がよく取り上げている天文・宇宙関連も似たようなものなのですが、脳科学やコンピュータあたりの特集は好物でしたから。

今回、『ナショナルジオグラフィック 日本版』を読もうと思ったきっかけは、特集が「睡眠」だったからです。
睡眠も脳と大きな関りがありますし、私自身が現在慢性的な寝不足…といいますか、おそらく睡眠障害に陥っているという自覚もあるため、他人事ではなく感じたのです。

それにしても、前号の特集が「楽園を奪われる海鳥」でしたから、ベクトルの方向がずいぶん違うなぁという印象もなきにしもあらず。

『ナショナルジオグラフィック 日本版』2018.8月号目次

この電子版目次と表紙を見比べただけでわかります。誌面が大幅にカットされていることが。

『ナショナルジオグラフィック』2018.8月号目次1 『ナショナルジオグラフィック』2018.8月号目次2

特集●睡眠 乱される現代人の眠り

『ナショナルジオグラフィック』の表紙には「日本人のおよそ4割は6時間も眠らない」という一文が挿入されています。
これはなかなかショッキングかもしれませんね。私もその4割に該当しますが。

とはいえ、睡眠不足になっているのは何も日本人だけに限ったことではありません。
以前読んだ『COURRiER JAPON』2018.8月号でも現代人の睡眠時間の低下が取り上げられていましたし、目下、世界中でこの問題が顕在化してきつつあるというところなのではないでしょうか。

記事で最初に触れられていたのは、

米国人の睡眠時間は平均で7時間に満たず、1世紀前と比べて2時間ほど減っている

ということ。そして上記の日本人のデータの後、終夜営業のレストランでうたた寝する客もいることが述べられ(ご丁寧にファミレスでの写真付き)、「この国では人前での居眠りは大目に見られる」と付け加えられています。

なるほど、わざわざそんなことを言わなければならないというのは、そのことを奇異だと感じる多数の読者を想定しているからですね。世界の国々から見ると、日本人の居眠りはいわば異常だと。

「あぁ、元は外国の雑誌なんだなぁ」と実感しました。
日本では当たり前の光景といってもいいですからね。ファミレスはもとより、電車やバスなんかでも、居眠りする人は見かけます。

けれども、近年、そういう場で居眠りをする人よりも多く見受けられるのが「スマホを操作している人」だと思います。
そして、この「スマホ」を筆頭とする電子機器、人工照明が睡眠サイクルのズレを引き起こし、現代人を不眠へと駆り立てる大きな原因となっているということです。

人間の体内時計は、昼夜の周期に合わせて活動ができるようにタイミングを合わせます。この時、神経節細胞に存在する青色光を感じる受容体から出る信号によって体と脳とが整えられているのです。
青色光は太陽の光に多く含まれているので、それが少なくなってくると夜、すなわち寝るタイミングと判断されるという仕組みです。

が、パソコンやスマホなどの電子機器の画面から出る光にも青色光、ブルーライトが多く含まれています。そこで、夜になってもこういった機器を操作するということは、脳に対して「まだ昼間」という間違った情報を伝えてしまうこととなり、結果として体内時計を狂わせてしまい、不眠へと進行していく結果になるのです。

ちなみに、LED照明も白熱灯と比べて多くの青色光を含むため、不眠に悩む人は白熱灯の使用に戻した方がいいのかもしれません。
最近は逆に手に入りにくくなっていそうな気がしますが。

誌面の構成に難…?

ところで、この特集、面白くはあるのですが妙に読みにくいのです。

見開きで80%ほどの面積の写真プラスキャプション程度の文章の次に、見開きの2ページを使った写真。
ページをめくると右上から40%くらいを占めて配置された写真、さらにその後の見開きも90%が写真。

写真、写真、写真。

それが、ほぼ睡眠に関わる病や研究がテーマのものばかりなので、なんというか端的に表現するなら「病んでる」としか言いようがないと言いますか。
写真のクォリティは間違いないのでしょう。
でも、だからこそ、こんなに大きく載せない方がいいんじゃないの…?

なんて思ってしまうのは、まぁ私がやわな日本人だから、なのかもしれませんけどね。
きっと他の特集、それこそ海鳥だったら、美麗な写真を眺めて満足できるのかもしれません。
逆に、海鳥が悲惨な境遇に追いやられているという状況を、まざまざと見せつけられることになった可能性もあるでしょうし、どうもこちらの方がありえそうに思いますが。

どちらにせよ、しっかりと記事を読みたいのに写真に邪魔をされているという印象をぬぐい切れず、そういう点で先の『COURRiER JAPON』と非常によく似ています。
つまり私は海外雑誌の誌面構成に慣れておらず、拒絶反応を起こしているのかもしれません。うーむ。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)を防ぐには

そんな感じで、記事を読むことにいまひとつ集中できなかったのですが、ひとつ面白いトピックがありました。
それが

眠り全体を通じて、記憶は脳に強く刻まれる

ということで、そこから

たとえば戦闘地域で悲惨な体験をした兵士は、疲れ果てていてもすぐに寝ない方がいい。心的外傷後ストレス障害(PTSD)を防ぐには、6時間から8時間は目を覚ました状態でいるべきだ

というカリフォルニア大学ロサンゼルス校の神経科学者ジーナ・ポーの説が紹介されていたことです。

トラウマになりそうな体験の後、気持ちの整理がつかないまま眠ってしまうと、そのネガティブな体験が長期記憶として精神に強く刻まれやすいのだそうです。
フラッシュバックを起こしやすくなるということでしょうね。あぁ、イヤですね、これは確かに。

でも、それでは、「今日は嫌なことがあったから、さっさと寝て忘れちゃお」というのは逆効果なのでしょうか。
「嫌なことがあっても、一晩寝たら忘れちゃう♪」という非常に羨ましいパーソナリティの持ち主は、ネガティブな記憶をどうやって忘れ去るのでしょうか。
こんな疑問も生まれました。

それに対する答え…になりそうなものが、4段階あるとされる睡眠のサイクルにありそうです。

第1、第2段階の浅い眠りのうちに、脳波活動を続け記憶の取捨選択、編集作業を行います。先に述べた、体験を記憶に書き込む段階です。

その後に続く第3、第4段階では昏睡に近い深い眠りとなり、この眠りこそが脳にとっては必要不可欠なメンテナンスといえるものです。細胞の回復、成長ホルモンの分泌は主にこの段階で多くなされます。
感情の調整や傷の治り具合にも関わり、脳細胞の老廃物を排出するのもこの時だそうです。

深い眠りがきちんととれれば気分が整うということは、記憶の取捨選択の段階でわざわざ嫌な記憶をチョイスして書き込んだりしなくなるということなのかもしれません。

いずれにしても、睡眠って本当に大事です。
もっと寝た方がいいとわかってはいるのですが、鬱に入ってくると寝ようという気がなくなってくるんですよね。
逆にハイになってくると、今度は疲れのセンサーが極端に鈍っているので寝る必要性を感じない。
調子が良くて落ち着いているときは、それなりの時間になるとちゃんと眠くなるのですが、そういう時に限って他にやりたいことがあったりして(テニラビのランキングイベントとかね…)やっぱり睡眠を削って頑張っちゃう。
難しいです。一番最後のは自業自得ですが。

日常的に睡眠時間が6時間未満の人はうつ病、精神障害、脳卒中、肥満のリスクが高い。

というのは、まぁ事実なのでしょうが、うつ病、精神障害を患っている「から」、睡眠時間を確保しにくいというのも成り立つのではないかな、と私はひそかに思っています。

『ナショナルジオグラフィック 日本版』2018.8月号感想とまとめ

誌面に癖がなければ、もっとしっかり読み込めたと思うのですが、少し理解が追いつきませんでした。
ですが、写真の美しさは特筆すべきものだと思います。私にはあまりピンとこない記事でしたが、「希少動物を守る第一歩」でのハシビロコウやフィリピンワシの写真には一瞬ハッとさせられるパワーがありました。

また、冊子版に比べると読めるページはほぼ半分。表紙に記載されている第1特集以外の特集記事がお目当てなら、冊子版を購読した方がいいですね。
今号で言うなら「毒殺される野生動物」特集は面白そうでしたが…
“家畜を食い荒らされた報復として、マサイの人々が安価で毒性の高い農薬を用いて野生動物を殺す”って、なんじゃそりゃ!? 的な…

次号の特集は「人類の旅路を歩く秘境への道」。人類の拡散ルートをたどり、アフガニスタンの秘境に入る、とのことです。いわゆる人文地理という分野ですか。うーん、食指が動きません。

2018.8.13配信開始//2018.10.12配信停止




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